低学歴でも会計士になれる?
まず、公認会計士試験には受験資格の制限がありません。
三大国家資格といわれる医師・弁護士・公認会計士のうち、特別な学位の卒業要件が不要とされているのは公認会計士だけです。つまり、チャンスは誰にでもあるということです。
受験者の多様性が担保されている公認会計士試験ですが、その合格者の属性はいわゆる高学歴者に偏りがみられます。
以上は、公認会計士稲門会(早稲田大学)調査の令和2年度試験の大学別合格者数です。慶應義塾大学や早稲田大学を筆頭に有名大学が並んでいます。
ちなみにこれらの大学の合格者数合計668人。令和2年度の論文式試験合格者数が1,335人でしたので、10校の大学だけでちょうど半分くらいの合格者を占めていることになります。
どうやら高偏差値の大学出身者の方が合格しやすいようですが、ではなぜ高学歴受験生が公認会計士試験に強いのでしょうか。
今回はその疑問について、解説したいと思います。
なぜ高学歴の合格者が多いのか?
勘所を押さえるのが上手い
高学歴はなぜか勉強の要領がよいものです。
試験勉強の目的は合格点を取ることであり、そのためには問題に正確に答える必要があります。
高学歴の受験生は、出題傾向を分析したうえ集中力や勉強時間といったリソースを配分しており、濃淡をつけた学習で効率的に勉強を進めていく傾向があります。実はこのテクニックは大学受験と共通するノウハウであり、彼らにとってはすでに体に染みついた常識的な戦略なのです。
試験には問題があり、問題は出題者によって作られます。テキストを読みながら、「ここは試験で問われる可能性が高い」、「こういう捻りで問題を出題するのではないか」という思考を常にもって勉強に取り組めば成果も自ずと上がってきます。
信じられないことでしょうが、高学歴はこの戦法を無意識下に実行するのです。
このような受験センスを磨き上げてきたことが、高学歴の合格率の高さの源泉となっています。
長期間勉強すること抵抗がない
高学歴は、公認会計士試験以上の時間を大学受験の勉強に費やしています。
各地域トップの進学校では高校1年生(場合によってはもっと前)から受験を意識した勉強を始めており、3年間の累積勉強時間は想像を絶する量に膨らみます。
試しに計算してみましょう。
平日は6時間の授業の後、部活終わりに帰宅して3時間の勉強。休日は午前部活動ののち、午後から5時間の勉強。以上を高校3年間続けたとすると…
平日:9時間×5日×52週×3年=7,020時間
休日:5時間×2日×52週×3年=1,560時間
合計8,580時間を大学受験のために使っていることになります。体育などの受験に直接かかわりがない科目を含めていることや、部活引退後の受験直前機関を含めていないことで概算値となっていますが、大きく間違いはないでしょう。
これだけの努力を重ねてきた人間と土俵を一にして競うという事実を、受験であまり本気を出さなかった方は理解する必要があります。
成功体験を持っている
高学歴は、高校受験や大学受験での成功体験を持っています。
彼らの半生を振り返ると、中学、高校とコツコツと勉強を継続し、全国模試でE判定を喰らいながら、不屈の精神で大学受験を突破してきています。その経験が公認会計士試験に発揮されないわけがありません。
それらの受験経験はもはや過去のものですが、彼らはどのくらい勉強すると成果(点数)が出るのか?を高いレベルで体感しており、それまでの結果の出ない勉強期間を高く飛躍するための準備期間として割り切ることができます。
公開模試の結果が悪くとも反省材料として冷静に受け止め、本番で力を発揮するために淡々と力を蓄え続ける習性をもっているのです。相対評価である公認会計士試験では絶対に敵に回したくない存在です。
過去ではなく未来に目を向けることが大切
大学受験で本領を発揮されなかった人にとっては、頭の痛い内容だったかもしれません。
ですが、冒頭申し上げた通り公認会計士試験に特別な要件はありません。医学部に入れなければ医者になることはできませんが、どのような経歴だろうと公認会計士は目指せますし、試験に合格してしまいさえすれば学歴なんて関係ありません。
スタート地点では多少不利かもしれませんが、ここから巻き返せばよいのです。終わった大学受験それ自体が直接試験の結果に関係はしません。
むしろ高学歴を見返すくらいのマインドで試験に臨みましょう。それくらいのハングリー精神があれば、きっと試験を突破できるはずです。
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