監査業務はオワコンなのか? 会計業界トレンドを掴む

会計士のお仕事

公認会計士試験に合格された方の多くは、監査法人に就職し、監査業務に従事することになります。

その後、コンサル会社や事業会社に転職したり、独立したりなどのキャリア形成の幅は広がりますが、「まずは監査業務」との風潮は根強いのではないでしょうか。

(そもそも監査業務をやってくれることを期待して国家試験を実施しているわけで、当然と言えばそれまでですが…)

一方で、近年IT化などのあおりを受けて監査報酬の縮小が懸念されています。

そこで、今回は多くの方が携わることになる監査業務の先行きについて、銀行監査を一例に確認してみたいと思います。

いま非監査業務が伸びている?

下の表は、3都市銀行の2021年3月期銀行監査報酬実績をまとめたものです。

監査証明業務前年同期比非監査業務前年同期比
みずほFG3885△ 31151△ 13
三菱UFJFG5693△ 56336207
三井住友FG4120205350
令和3年10月1日発刊ニッキン「21年3月期の銀行監査報酬」よりデータ抜粋(単位:百万円)

監査報酬はそれぞれ、みずほFG39億円、三菱UFGFG57億円、三井住友FG41億円となっており、3行のうち2行で昨対比で減少しています。とはいえ、三井住友FGで大幅増加していることを考えると、一概に減っているとの印象にはなりにくいかもしれませんね。

ここで注目すべきが、三菱UFJFGで増加している非監査報酬です。実は都市銀行だけではなく、地方銀行でもこの非監査報酬が増加しています。

金融機関を取り巻く課題は、「LIOBR廃止対応」「金融検査マニュアル廃止対応」「コロナ引当金見積り対応」など山積みです。これらに対応するコンサルティング業務の増加が、非監査報酬の伸びている背景です。

銀行業に限らず様々な産業が課題を抱えており、経営パートナーとして監査法人や会計士が選ばれているということでしょう。

監査業務はオワコンなのか?

ここまでを踏まえると、「監査ではなく、コンサルやアドバイザリーを目指した方がいいのか?」と思われ、監査が斜陽業務に見えてきます。

ですが、そんな単純なお話でもないのが難しいところ。監査業務が「財務諸表をチェックする仕事」だとすれば、非監査業務は「財務諸表作成をお手伝いする仕事」であり、お互いに無関係ではいられません。

そのため、非監査業務で成果を上げるためには、監査業務の勘所が大いに生きてきます。

ちょっと過激な人だと、「監査もやったことのない人間が、コンサルをできるわけがない。」なんて言うこともあります。

これは少し大げさにも思えますが、少なくとも監査業務の経験は、将来コンサルやアドバイザリーになるために無意味ということはなさそうです。

結論:先を見据えつつ着実にキャリア形成を

監査にしろ非監査にしろ、クライアントの外部環境や抱えている課題により求められる能力は日々変化していきます。今時点で非監査業務がトレンドだから一生監査はやらない、というのはキャリア形成としてリスクが高いように思われます。

つまるところ、生き残るためには業界の時流をみて臨機応変にキャリアとスキルを積み上げていくほかなさそうです。

監査業務にアサインされた場合でも、しっかりと仕事をこなしてスキルを積み上げていくことで、将来的なトレンドに対応できる能力を身に付けたいものです。

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