特別付利は地方銀行経営の救世主となりえるか?

厳しい外部環境が続く銀行業界

2016年1月に日本銀行の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」、いわゆるマイナス金利政策が導入されて以来、銀行業界は厳しい外部環境に晒されています。

2021年のコロナ禍でも、与信コストの増加や給付金などで運用先のない預金の増加といった新しい経営課題に直面しています。

特に地方銀行は、地域の人口減少や高齢化なども相まって事業構造改革の必要性に迫られています。

そんなハードモードに突入した地方銀行に対する救済措置の一つとして「地域金融機関強化のための特別当座預金制度」(以下、特別付利)が導入されました。

特別付利とは?

特別付利とは、 向こう3年間にわたり日銀当座預金に年利0.1%の金利を上乗せするという制度です。 2020年度は、OHR(経費率)を2019年度比で1%以上削減した銀行に対して適用されました。

日銀当座預金とは、銀行が日本銀行に預けているお金のことです。この預金は、準備預金と超過準備に分類され、マイナス金利政策下では超過準備に対して逆に利息を支払わなければなりません。

これでは、比較的体力のない地方銀行が経営改善をする前に行き倒れてしまうおそれがあるため、「改善努力をしている銀行は支援しますよ。」という国からの救済措置を用意された格好になります。

なお、2020年度はほとんどの地方銀行が要件を達成しました。今後、OHRの削減要件は2021年度で3%以上、2022年度は4%以上となっており、適用のハードルが高くなっています。

銀行経営への影響

特別付利は3年間の時限措置であるため、これだけでは延命措置にしかならないことは明らかです。

2021年10月からは全銀ネットの手数料改定に伴って送金手数料収入減少も見込まれており、依然として業界環境改善の兆しはないように考えられます。

地方銀行は、この与えられた猶予期間を有効活用して生き残り策を模索していくことになります。

数年後には業界地図もだいぶ塗り替わっているかもしれません。

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